けむたい後輩

けむたい後輩

けむたい後輩

体が弱く長い入院生活を経験したこともある真実子、その真実子が憧れている先輩の栞子、真実子のおさななじみである美里という同じ大学に通う3人の女の話。物語の語り手は栞子と美里で真実子は彼女たちの目を通してしか描かれません。最初は無邪気なんだけどちょっと思い込みが強い女の子なのかなと思っていた真実子が徐々に表す顔にはちょっとした恐怖を覚えました。取るに足らない子であったはずの真実子がどんどん物事を吸収してめきめきと頭角を現していく。それが怖くないわけがないだろう。自分の薄っぺらさを白日の下に晒す存在が怖くない人なんているわけがない。エピローグ部分にゾワーっとしたいやーな汗をかいたものです。でも私はそういうの嫌いじゃないです。
『けむたい後輩』というタイトルが何ともうまいなあと思います。あと、メイン3人の名前も。真実子って真実の子なんですよね。彼女は栞子美里双方に真実を突き付ける存在であるという意味なんだなあと読後に気付きました。栞子は人の人生の栞にはなるけれど栞は栞でしかないのかなーとか。美里は彼女の美貌がもたらすものに悩まされる存在なのかなーとか。
私は柚木作品を『あまからカルテット』しか読んだことがなかったんだけど、そちらを白柚木というのならばこちらは黒柚木。私はこっちのラインのが断然好みなのでもう少し柚木作品を追いかけたいと思います。面白かった。