格闘するものに○

格闘する者に○ (新潮文庫)

格闘する者に○ (新潮文庫)

しをんさんのデビュー作である就活小説。キャラの造形や根底に流れるものなどが今のしをんさんとちゃんと繋がっていて面白かったです。三浦しをんという作家は人に優しくもあり厳しくもある。シニカルでありながら、ただそれだけの作家じゃない。私はそう感じています。
こういうことはあんまりいたくないんだけど、やっぱり女性だからこそ書けたという部分もあると思いました。学校の中だけならば、一番でいられたかもしれないけれど社会では女はそうはいかない。面接では男性ならば聞かれないだろうことも女性では平気で言われたりもします*1。学校のテストと違って何をしたら点数が取れるのか、合格になるのかなんてわからない厳しさ。それと、自分が「女」であることをいやでも自覚させられるのが就活だと思うのです。女であることを意識的にであれ無意識であれ受け入れて疑問を抱くことなくいけるのならばいいのだけど、それに少しでも疑問を持ってしまうとまあ色々と苦しいわけです。そういった通過儀礼の役割が就活にはあるのではないのかと思うのです。
かつて斎藤美奈子が「女の子は社長夫人になるか社長になるか、その2つの道がある」と著書で書いていたけど*2、今はどちらも道も険しいものです。だけど、それでも生きてくしかない。

*1:だからといって男性が楽に生きてるというわけは決してないわけで。そこは女性とは違った問題が立ちふさがっているのです。世間は厳しい。

*2:手元に本がないのでうろ覚えの引用でスイマセン。