明日の記憶

明日の記憶 (光文社文庫)

明日の記憶 (光文社文庫)

広告代理店で働く50歳の男性が若年性アルツハイマーに罹る話。渡辺謙主演で映画化もされてます。アルツハイマーの主人公の1人称で描かれているので途中途中で現実と妄想がごっちゃ混ぜになっています。特にラストシーンはそのせいでファンタジックな感じです。全体としてアルツハイマーの本当にきついところは避けて描かれているように思うので、ファンタジックになるのは当然なのでしょう。ラストシーン以降に続く物語が本当に大変なところでその辺をお茶で濁してるのはなんだかなあ。お話としては面白かったんですが、もうちょっときれいごとじゃない部分を前面に押し出してくれたほうが私は好きです。
ただ、自分が自分ではなくなってしまうというアルツハイマーの恐ろしさが迫ってくるような感じはさすが。なにが人間を作っているのかはいろいろあるけれど、記憶がその人そのものであるというのも一理あります。だからその記憶が抜け落ちていく恐怖はたまらないものがあって、それがアルツハイマーの恐ろしさです。平均7年で死に至る病、それがアルツハイマー。予備知識を得るにはちょうどいい本かもしれません。