向日葵の咲かない夏

向日葵の咲かない夏 (新潮文庫)

向日葵の咲かない夏 (新潮文庫)

小学校4年生の夏休み直前にクラスメイトへの届け物をして首つり死体を発見してしまうことからその謎に3歳の妹とともに迫る話。面白かったけど怖かったです。本来ならホラーって苦手な分野なんだけど、一気読みさせるくらいよかったです。作品に流れる空気が独特で推理が二転三転しながら最終的にたどり着いたところがそこだったのかーと読んでてぞくぞくっとしました。あやしいあやしいとは思いつつも、妹が実は…だったなんて。やられました。

「みんな同じなんだ。僕だけじゃない。自分がやったことを、ぜんぶそのまま受け入れて生きていける人なんていない。どこにもいない。失敗をぜんぶ後悔したり、取り返しのつかないことをぜんぶ取り返そうとしたり、そんなことやってたら、生きていけっこない。だからみんな、物語をつくるんだ。昨日はこんなことをした、今日はこんなことをしてるって、思い込んで生きてる。見たくないところは見ないようにして、見たいところはしっかり憶え込んで。みんなそうなんだ。僕は、みんなと同じことをやっただけなんだ。僕だけじゃないんだ。誰だってそうなんだ」

多かれ少なかれ、人間ってそういうものかもしれません。じゃないと、頭がパンクしちゃうっていうか、心が壊れちゃうっていうか。ホラーミステリとしてだけではなく、壊れてしまった人間を描いた話としてもうまくまとまっていたと思います。