声を聴かせて

声を聴かせて

声を聴かせて

子育て中の母とその子供のいじめを描いた2編を収録。表題作「声を聴かせて」は、里帰り出産中の娘を通して過去へ旅する母の話です。母から見た娘はできた子で何も問題なく育ったように見えます。が、娘の方はそうではなく、母に言わなかっただけで色々な経験をしてきました。

「そんな顔しないで、お母さん。私はべつに、責めるつもりは全然ないし、ただ聞いてみたかったんだ。お母さんは、もしかしたら全部知ってて見て見ぬふりをしてるのかなって、ちらっと勘ぐった時期もあったから。でも、そうじゃなかったなら、そのほうがいいの。私はね、その時は全力で、いじめられてることをお母さんに隠してたから。何が何でも隠そうと思ってたから。考えてみたら、気づかれなくて当然だった」

「そう、子どもには子どもなりのプライドがあるっていうこと。いじめられているっていう事実が取っても恥ずかしかったんだよね。だから、特にお母さんには知られたくなかった。どんなにきつくても、家に帰ったら気分を変えて、ニコニコして待ってようってがんばってたんだよね。なんて、すごいケナゲ?」

私も小学生の時、いじめられっ子だったんで気持ちはすごくわかります。絶対に親に感ずかれないように、細心の注意を払って家で過ごしてたもの。本当は辛くて辛くてたまらかったんだけど、親にいっちゃいけないって思ってて言えなかった。まあ、私のいじめなんて今思うと大したことないもので、廊下を雑巾がけしてたらゴムでっぽうを当てられたり、男の子たちに悪口言われてたくらいでした。物を隠されたり殴られたり蹴られたりとか全然なかったもの。友達いなかったわけじゃないし。甘っちょろいいじめだったなあ。ただ、あの時の嫌な気持ちは全然忘れられなくて、その後の私を決定づけた出来事であるのは変わらないと思ってます。
もう1作の「ちいさな甲羅」は幼稚園ママの話です。私も幼稚園児の子持ちなんだけど、これはきついなあ。逃げ場がない中でのいじめはたまらない。