タルト・タタンの夢

タルト・タタンの夢 (創元クライム・クラブ)

小さなフランス料理店を舞台にした食べ物にまつわる謎を描いた連作短編ミステリ。7つの短編全て、上品な後味で優しい気持ちになれる話です。時間がちょっとあいたときに読むのに適してると思います。ドラマの原作にもいいかもしれません。

いくら話しても、聞いてるふりをして聞いてない人には伝わらない。自分が今まで伝わってると思っていたことも、なにひとつ伝わっていたかったのだとしたら。

「オッソ・イラティをめぐる不和」からの引用。妻に理由もわからず家出された男性客がシェフの料理と話からなぜ、彼女が出ていってしまったのかを気づかされる話です。彼女は彼が自分の話を聞き流してばかりで、ちゃんと聞いてくれなかったことに無力感を覚えていたのだろうとシェフは言います。この気持ちわかるなあ。だってさ、聞いて欲しいんだもの、やっぱ。寂しいじゃないですか。