- 作者: 梨屋アリエ
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/09/12
- メディア: 単行本
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途中までは3人の置かれている状況が辛くて読むのがきつかったです。これYAなんだよね? それにしてはひどくないかいと。幸福な人は皆一様に幸福だけど、不幸な人は皆違った形で不幸であるっていうののいい例だなあと思ったけど、でもきつい。初めはそう思ってたけれど、徐々に物語が進んでいくにつれぐんぐんひきつけられていきました。
子供は親を選ぶことはできない。上っ面だけ見れば弥生は愛弓よりずっと幸せなんだろう。親は社長でなんでも好きなようにできて。愛弓のように給食が生命線ということもないし。でも心は全然満たされていない。
「ヤヨちゃんてさあ、嘘つきでプライドが高くって、そのくせ寂しがり屋なんだよねー。こんなゲームなんて、わざと負ければ、すぐ終わらせられるのに、いつまでも必死で食いついてくるんだよ。いっつもつまらなそうにやってるのに、ヤヨちゃんからは絶対にやめないんだよ。きっと本当は誰かと一緒にいたいんだろうなー。なのにどうして嘘をつくんだろうね」
中丸トモは、学校での弥生ことを、嘘つきという言葉ではなく、幽霊みたいだと言っていた。宮入弥生という人は、学校では幽霊みたいに“死んでいる”ということだろうか。じゃあ、どこでなら、“生きて“いられるのだろう?
どこに行っても居場所がない弥生。3人の中で最も救ってあげなきゃいけない、そして救って欲しいと思っているのは弥生なのだろう。3人の中で仲間を信じることができなかった弥生の闇は深くて覗きこむのが怖いくらいです。生きてる実感がつかめずにふらふらしている様は痛々しさそのものでした。
わたしが壊したかったのは、自分の中に閉じられた感覚だったのかもしれない。(略)
そして、わたしがわたしであるということを、わたしがどうしてわたしなのかを、わたしたちは長い時間をかけて考えていかなくてはならないのだ。
わたしも10代の頃、こういうことを考えてた時期がありました。いまだにはっきりとした答えは出ないけれど、薄ぼんやりとはわかってきたような気がします。
最初はYAにしてはどぎついなあと思っていたけれど、ラスト付近にきてやはりこの本はYAでなければいけないのだと感じました。悩んだり苦しんだり迷ったりしている子供たちにこそ、必要な本なのでしょうね。最後が尻切れトンボっぽい終わり方だけど私はこれでよかったのだと思います。その先に希望があることを信じて終われることこそが、この本の救いなのだろうから。