結婚相手は抽選で

結婚相手は抽選で

結婚相手は抽選で

抽選お見合い結婚法が、来年四月一日より施行されることが決まった。対象は、二十五歳から三十五歳までの男女で、前科や離婚歴がなく、子供のいない独身者である。抽選方法は、本人の年齢プラスマイナス五歳の範囲内で無作為とされている。
相手が気に入らなければ、三人までは断ることができる。しかし、どうしても気にいらずに三人断った場合は、テロ対策活動後方支援隊(通商テロ撲滅隊)に二年間従事しなければならない。

少子化対策の一環としてこんなトンデモ法案が施行されることになり、それに振り回される男女を描いた話。結婚とは何であるか、母娘の共依存非モテといった今日を語るキーワードがテーマにもなってるんだけどテンポもよく文章が軽やかなので読みやすかったです。私が読んでて最も興味が惹かれたのはやはり母娘の関係についてのところ。アルコール依存症の父を持ったことにより母の希望の星とならざるを得なかった地方出身の看護師好美と娘の面倒をみるのが生きがいの母を持つ友達親子な奈々。この2組の母娘は一見全く違ったように見えて母親が娘の人生を搾取してその影を色濃く残し娘を支配しつつも依存して生きているという点では同じです。母と娘というのは同性であるがゆえにいいところもたくさんあるけれど、それゆえに難しい面も多々あります。母は娘を鏡にしがちだし、娘も又母の鏡であろうとしてしまうから。そこのところをうまいこと描いきながらも、そこからの脱出を図るにはどうしたらいいのかという点も無理なく描いていてうまいなあと思いました。
物語の着地点もよく、読後感もよかったです。こういうときに読むのにちょうどいい本かも。