ユリイカ2012年5月号

これはドラマ好きならば読むべし、読んで絶対損はさせないと思います。ドラマについて考える際、切り口というのはたくさんあってその中でも脚本かに注目した特集というのはまあ嬉しいのなんのって。何故ならばこの人たちの言葉をなかなか聞く事ができないからです。裏話的なのをたくさん聞きたいというわけではないけれど、どういう思考をして脚本が出来上がっていったかという話は非常に興味深かったです。頭の中を少しのぞかせてもらえたみたいな錯覚をさせてもらってありがたい事です。

説明しなくてもわかればいいんだけど今はもう全部口に出して言ってあげないと視聴率が取れなかったりするんですよね。(中略)今は台詞を言って号泣したり、モノローグを足してお酒を飲んで悲しい顔をするとかしないと何も伝わらないんですね。

結局、言ってることと頭の中の事は違うでしょ、っていうのが説明しないことの全てなんですよね。(中略)やっぱり僕は、思っている事が表に出るはずがないと考えているところがあって、そこに触れることは本人ですらできない、ブラックボックスのようなものだと思っているんです。(中略)登場人物のみんながそれぞれのブラックボックスを頭の上にくっつけながら歩いていて、そのブラックボックスについて説明できない人たちが、不器用ながらもお互いにコミュニケーションとろうとする姿が面白いと思うし、それこそがぼくにとっての「説明する/しない」の全ての起点なんです。(中略)説明の書かれた台詞から入っちゃうと、入り口が感情じゃなくなって、ストーリーに取り込まれてしまう感じがする。

引用したのは坂元裕二のインタビューから。なるほどなあと。私は説明過多のドラマってあんまり好きじゃないんだけど、今はわかりやすく作ることが求められてるのかなあというふうにも思いました。だけどもブラックボックス理論がとっても面白くて私はこういうの大好き。坂元裕二という脚本家の脚本論であると同時に人間論でもあるわけだけど、すっごく面白いなあと思いました。人間の頭の中なんてブラックボックスで本当の事なんて本人でさえわからない。いやーさっすがだわ。「それでも、生きてゆく」は確かにそういうドラマだったもの。
そのほかのインタビュー及び記事も、「ここ、ここに面白い事書いてある!」っていうのがあちこちあって読み応え十分でした。またこういう特集を読みたいものです。