夏光

夏光

夏光

体の一部が異形になった人たちを描いた6つの短編を収めた短編集。前半3つは少し前の時代が舞台で後半3つは現代が舞台。デビュー作でここまで完成度が高い作品を書けるなんてすごいなあと思いました。著者紹介見るまでデビュー作だなんて思いもしなかったもの。新人らしい荒さがなくて洗練されてると感じます。
身体と精神というのは実に密接な関係にあります。相互に影響しあうため、片方だけで語ることはできません。そういう意味では面白いテーマの短編集だなあと思いました。
6つの中では「夜鷹の朝」が一番好き。読んでて胸が苦しくて苦しくて。顕子も奥様も何も悪くはないのに。奥様は自分がもう少し強かったらと後悔の念を表します。でも、それだけじゃないんでしょうね。生きてくためには切り捨ててしまう物事がある。決して切り捨ててはいけないような事でもね。
「は」はひたすら怖かったです。というかグロくて気持ち悪かったといったほうが正解かも。私テレビの手術シーンとかも苦手なんですよね。血は平気なんだけど内臓露出系はダメなんです。映像でも文字でも食らうダメージは変わらず。年取って割と色んな事に耐性ついてきたけどこればっかは苦手なままだなあ。