六月の輝き

六月の輝き

六月の輝き

ある特殊能力を持つ少女美耶とその幼なじみ美奈子の小学生から高校生までの物語を連作短編形式でつづったお話。面白かったー! 私が読んだ乾ルカ作品4作の中で今のところ一番好きです。少女の成長と交流と断絶をうまく描いていて心にしみました。うまい連作短編というのはこういうのなんだなあという感じ。全部で7編の短編が収録されているのですが、ざらっとした味わいの苦いお話から涙で前が見えないよっていうホロリとする話まで取りそろえてあって読後感が各短編ごとに違うので飽きずに読むことができます。また、これらは連作短編であるのでまとまった一つの長編小説としてみた場合、積み重ねられた短編たちから立ちあがる物語にたまらなく惹かれました。
私の好みは「特別ではなく」と「雪と桜」。「特別ではなく」は美奈子と美耶と同じクラスの優等生史恵の話。

あたしがあたしであることに、何も変わりはないのだから。

この言葉がこれまたぐっとくるのなんのって。この言葉は非常にありふれた使い古されたフレーズだというのに、そこに至る心の機敏がが丁寧に描かれているおかげで手癖が出た言葉に感じないのです。こういうとこ好きだなあと思います。
「雪と桜」は美奈子の母が語り手の話。

あなたなら、きっと乗り越えられると信じていた。
その手はもう自由よ。
だから、お母さんは今、とっても穏やかなの。(略)
美奈子、あなたは一人じゃないわ。
お母さん、なによりそれが嬉しい。

これはもう涙なしには読めませんでした。書かれている風景が頭に浮かんできてそれが絵になるものだから余計に泣けてきてねえ。たぶんだけど私が余分に感情移入し過ぎてるせいもあるとは思うんですが。あーもうたまんない。