大奥〜右衛門佐・綱吉篇

公開初日の初回に見てきました。客層は同年代の女性が多いのかなーと思ったら意外や意外、年配の肩の姿が思ったよりかありました。なかには年配で一人で見に来てた男性もいてビックリ。原作から入った客は女性のほうのが多いだろうし、キャストから入った客も女性のが多いだろうし予想外でした。私が思う、時代劇を好んで見られる層の方がきていたんですね。この方たちは連ドラも見て気にいって映画館に足を運んだのかそうなのかが気になるところ。それにしても、こうやって足を運ぶと自分が思ってるのと違う事に出会って面白いものですね。
内容としては、4巻半ばから6巻半ばまでをうまくまとめ上げたなあという感じかと思います。もし、映画ではなく連ドラであったらここはもっと違ったふうにできたのではないのかなーという部分もあるものの、私はおおむね満足です。だって最後の20分くらいずーっと泣きどおしだったんだもの。アイメイクぐちゃぐちゃになるくらい泣きました。わかってたらアイメイクなんぞしていかなかったのに。自分でも驚くくらい泣いたわ。
あとは、連ドラで不満だったセットや衣装のちゃちさが映画で予算があるおかげで随分いい感じになってました。というか明らかにお金かかってるのが丸わかりでした(笑) まあ、そういうものですね。
パンフによしながふみのインタが載ってたんだけど、それによると有功と右衛門佐の一人二役を堺さんに指名したのは荒木プロデューサーだそうです。でもって御台所信平をクドカン、伝兵衛を要潤、秋本を柄本佑というのはよしながふみが名前を出したらOKが出たキャスティングだとか。これにはビックリ。なんていうか私にはそういうイメージがなかったんだけど、二次元から三次元に変換するにあたり生身の役者さんを考えた時に原作者としてそう変換されるのかーって。面白い発見でした。
では、以下ネタばれしてるので畳みます。
今回のナレーションは、妹へ届かない手紙をつづっているという設定で秋本が行っています。なるほどねーなるほど。私はこのナレーション好きでした。ただ、原作読んでない人にとっては秋本の妹って誰だよってなるのでそこら辺は説明不足かも。
原作を濃縮して色々カットしてるからか*1、吉保の綱吉ラブ度が原作より上がっています。なんだろう、映画だけ見ると愛の人だなこの人。けっしてまっすぐなだけの愛ではないけれど、吉保は確かに綱吉を心から愛してた。誰よりも綱吉のそばにいて彼女を見つめていた吉保。吉保と右衛門佐初対面のシーンは原作以上に迫力がある仕上がりでした。ある意味ホラーだわ。
オノマチは吉保役が思ってたよりかよかったと思います。菅野ちゃんとのバランスは取れてたんじゃないのかな。
綱吉が子を亡くしてもなお、世継ぎを作るために次々と男達を品定めしてくシーンはなんていうか物悲しさが画面に出ててなんともいえなかったです。華やかなシーンでもあるけれど、綱吉の心の中はとてもそれとはかけ離れているので、その乖離が余計に悲しさを産んでました。
私が原作でも涙したシーンはもれなく映画でも涙ものでした。綱吉が「将軍とは岡場所で身体を売る男よりもいやしい身分の女のことだ」とか未だに世継ぎを望む父を目の当たりにして「月のものなどとうになくなったわ」というとことかね。
菅野ちゃん演じる綱吉は私がマンガ読みながら思い描いてた綱吉とはちょっと違ったセリフ回しでした。まあ私が勝手にイメージ作ってただけなんですけどね。そこのとこは多部ちゃん家光との違うとこかと。菅野ちゃんのセリフ回しはイメージとは違ったけど、そのずれがこういう解釈の仕方もあったんだなあという新鮮な発見になって面白くもありました。同じセリフでも言い回しによって全然受けるイメージは違うもの。なるほどなあと。
パンフのよしながふみインタで菅野ちゃんのとあるシーンについて、原作ではそのように描いていなかったものを違った解釈で表現してすごいと驚き、予想の斜め上をいく演技を見れると嬉しくなるというふうに語っています。そうなんです、これですこれ。こういうのがあるからこそ、メディアミックスは面白い。そう思える作品に出会えるのは幸せなことだなあと思うのです。
堺さんの右衛門佐は有功とのメリハリついててさすが役者堺雅人って感じでした。あとはクライマックスの綱吉とのシーンはたまんないものがありました。さほど、原作からの違和感なしのキャスティングだと感じます。
今回、主演2人の愛を主軸においてるため、右衛門佐臨終で物語が締められています。2人が最初で最後の夜を共にし、その翌日綱吉が父の呪縛から逃れ6代将軍に姪を指名。慌てふためき取り消すように言う桂昌院をに「父上の徳子は昨日で死んだと思ってください」といいわたし*2、右衛門佐の元へと走る綱吉。吉保に行き手を阻まれつつも、突破し誰もいない御鈴廊下を走り抜ける途中で打ち掛けを脱ぎ捨て駆け付ける綱吉*3。しかし右衛門佐は既に事切れた後であった。この一連の流れはカタルシスのあるいい流れだったと思います。ただ、右衛門佐と綱吉の間の愛についてはそこまで深く描かれてる気がしないからちょっと不満かも。映画では右衛門佐が自分の事を「闇を彷徨うネズミ」というセリフが入ってるのがいいなあと思いました。でもってそれが綱吉と右衛門佐の共通点なんですよね。もう少し、もう少しだけ踏み行ってくれてたらなあ。
映画のアレンジも私は悪くないと思ったし楽しんだけど、綱吉臨終のシーンはそのまんまやって欲しかったかなあって思います。伝兵衛と綱吉がやっとただ松姫の親として対峙できるようになり、悲しみをともに分かち合う姿は私は好きなシーンでした。でもって信平がどんなに綱吉を愛していたのか、涙ながらに語り首を絞める様子や、吉保が思いのたけを綱吉にぶつけて息の根を止めるシーンはやっぱり綱吉編を締めくくる名シーンだと思うもの。もちろん、映画では吉保が綱吉の首を絞めるシーンはあったんだけど、あったんだけどでも違うの。父の愛以外信じきることができなかった綱吉が実は皆に恋い焦がれ愛されていたという終わり方が私はいいなあと思うのです。まあ、綱吉と右衛門佐のラブストーリーを前面に押し出すためには仕方がないアレンジだったわけですが。そこら辺は好みですかね。原作読まずに映画だけ見た人はどう感じるのかなーとか思っちゃいました。
基本的には私はよかったと思います。100点ではないけど、二次元から三次元にうつすということはどういう事なのかも含めて興味深く見ることができました。というか、じゃなかったらこんなに長々と書きやしないものね(笑)

*1:忠臣蔵とか丸っとカット。まあ仕方がないとこですね。

*2:仔細は違うがニュアンス的にはこんな感じのセリフ。原作にはないセリフなんだけど、付け加えるのはいいアレンジだと思う。

*3:原作では桂昌院が引っ張って脱げてしまうのが、綱吉が自ら脱ぎ捨てるというのがいいなあと思いました。