Close to You

Close to You (文春文庫)

Close to You (文春文庫)

共働き夫婦の夫が社内抗争に敗れて失業するところからある事件に巻き込まれる話。話の中でシャドウワークについて触れてる部分があります。シャドウワークとは家事労働などの報酬を受けない仕事で、しかも誰かが賃労働をすることのできる生活の基盤を維持するために不可欠なものをさします。妊娠出産、子育てなどの再生産労働も含みます。つまり、誰かがやらなきゃいけないんだけど無報酬であるためにやって当たり前の様に思われている労働のことです。介護や地域の活動なんかも当てはまると思います。

でもね、家にいて家事をしているだけの女にだって、悩みや苦しみはあるのよ。呑気に昼寝してワイドショー見ているだけ、何も考えていない低能だってあなたたちは思っているんでしょうけれど、わたしたちだって人間なんですもの、辛いことは山のように、あるのよ

本当に大切なことは、大切な問題は、いつだって足元にあるものなのよ。毎日の生活の中に、日々の暮らしの中に、ごく身の回りにあるものなのよ。生きるってそういうことなのよ……社会って、そこから出来上がっていくものなのよ……

これから働く女性は今以上に増えるだろうし、結婚しても出産しても働くのが普通になっていくと思います。男性だって介護問題に直面することが増えるでしょう。そうなっていくにつれ、シャドウワークについて再び考え直す時が来るはずです。生活の基盤は、足元にあるものです。その足元がぐらついていては豊かな生活など望めるすべはないと感じます。