はるがいったら

はるがいったら (集英社文庫)

はるがいったら (集英社文庫)

離婚して父親とその再婚相手の家族と住む弟の行と、社会人になって独り暮らしをしている姉の園の姉弟の日々を描いた話。第18回小説すばる新人賞受賞作。完璧主義でふと気付いたら他人のファッションチェックをしてしまう園の嫌な感じのところが自分と重なっていて痛いところをつかれました。本当に近しい人を除いて他人と距離を置いて付き合う園。うーん、気持ちわかるなあ。一方の弟行はふわっとしたところがあって私は好きでした。こういう男の子が学生時代近くにいたらなあって感じ。
物語の中で大事な役目を持っているのが、老犬ハル。14歳で介護が必要なハルの姿は身につまされます。動物を飼ったことがない私は、ペットが老いて死んでしまうのを見届ける飼い主の気持ちを本当の意味では理解ができません。想像するしか、ないわけです。この本の中で描かれる具体的な老犬介護の描写は大変なんだなあの一言しかありません。
私は母方の祖父を中学生の時に亡くしてるんですが*1、その介護を祖母・母・叔母の3人でしてました。退院してきてももうダメなのはわかっていたから最後は自宅でと祖母は思っていて、覚悟を決めての介護でした。結局、寝たきりになってから2カ月もしないうちに祖父は亡くなってしまったので、介護期間は短いものでした。でも、「この状態がもっと続いてたらきつかった」という母の言葉が今でも忘れられません。介護って大変なことがたくさんあるからきれい事だけじゃ、やっていけないんだよね。

*1:病院に行った時にはすでに末期がんでした