すべての若き野郎ども

すべての若き野郎ども

すべての若き野郎ども

第一回ドラマ原作大賞選考委員特別賞受賞作品。ヤンキー連作短編小説です。血気盛んな若者がわんさか出てきます。しかし、最後は喧嘩三昧の日々から抜け出してまっとうな大人になっていくので、安心して読めます。喧嘩しても大けがすることはあっても殺すことはないし。そういう意味じゃ、講談社とTBSがタッグを組んだだけはあります。

それに、その本では、現在の不都合の原因を、すべて過去に求めていた。激しい頭痛がするのは、前世で受けた傷が治っていないからだとか、異性にもてないのは、前世で恋人とうまくいかなかったからだとか。いずれにしても、そこには現実を引き受ける視点が欠けていた。よくないことは過去のせいで、いまがほどほどの生活だとしても、もっと多くを望んでいい。それを恭平は甘ったれていると感じたのだ。

「恋人は鎌倉人」より引用。最近ちょっと下火にはなってきたけど、江原啓之とはじめとするスピリチュアルブームに喧嘩を売る一文はよかったです。