赤朽葉家の伝説

赤朽葉家の伝説

赤朽葉家の伝説

山陰の村にある赤朽葉家の女3代を語った話。1部は神話的雰囲気を持った祖母万葉の時代の話、2部は伝説のレディースのヘッドから少女漫画家になった母毛毬の話、3部はそんな旧家に生まれ育った普通の娘の瞳子の話で、それぞれ雰囲気が違って楽しめました。50年もの時を駆け抜けるように描いていて、そういった民俗学的な部分も含めて面白かったです。

わたしたちは、その時代の人間としてしか生きられないものだろうか。たたらの世界をめぐるこの村の男たちも、女たちも、生きたその時代の、流れの中にいた。人間というのはとても不器用なものだ。わたし自身を振り返っても、まったくどうしてこんなにだめなんだろうと自分でもわかっているのに、そういう自分からなかなかうまく抜け出せない。変わるって難しいことだ。成長するって、たいへんなことだ。だけどわたしは、がんばって生きていくぞ、と思う。

3部からの引用。祖母の万葉は自らの運命を受け入れて大人になったけれど、母毛毬は赤朽葉家の長女としての運命は受け入れたけども最後まで大人になることなく死んでいきました。娘瞳子は大人になることを迷いながらも最後には大人になることについて考えて変化をしようとします。それぞれの時代によって色々な事情はあるけれど、時代が下るほど大人になるのが難しくなるなんて、皮肉だよなあと思います。