あの子の考えることは変

あの子の考えることは変

あの子の考えることは変

Gカップであることがアイデンティティでおっぱいになりたいと思いながらもセフレの横チンのことが好きなフリーターの巡谷と体臭を異様に気にしてダイオキシンに過剰反応しつつも一生処女だと嘆く無職の日田。そんな23歳の二人が同居している話。いつも通りの本谷ワールド炸裂って感じでした。自意識過剰の痛い女子を描かせたら本谷さんは本当にうまいと思う。痛いのを描くのだけなら色んな作家さんが書いてるけど、ただ単に痛いのを通り越して笑いにまで昇華させるパワーはさすが。これは本谷さんの専売特許だと感じます。
タイトルのあの子の考えることは変っていうのは、巡谷が日田を変だと思っているっていうことだけれどもでもそれだけじゃない。日田だって巡谷を変だと思ってるし、実際巡谷は変だ。でもそれは巡谷と日田だけじゃなくてみんな多かれ少なかれ、そうなんだと思う。この2人みたいに強烈な痛さがにじみ出てはいないかもしれないけど、でもあの子の考えることは変ってお互いに思ってる。お互い様だ。私たちの中に潜んでる自意識過剰の痛さを戯画化して可視化してくれる本谷有希子は貴重な作家さんだと思う。
ラスト、煙突に登っていく日田を追いかける巡谷の姿が印象的でへんちくりんな話を読後感よく締めくくっているように感じました。笑ったり感情を色んな方向に動かしつつ迎えたラストシーンが私は好きです。