空想オルガン

空想オルガン

空想オルガン

ハルチカが2年生の夏を迎えた頃の話。短編4作を収録。短編の中では「十の秘密」が一番好み。派手派手なギャルバン*1たちに隠された秘密を思うと何とも切なくなりました。ああ、青春万歳! 汚れた大人になってしまった私はここまで他人のために気持ちを強く持つことができるのだろうかと思ってしまいました。仲間って、絆ってステキだなあ。
短編はどれも面白くてよかったと思うけれど、まさかそれらが伏線となってラストあんなオチが待っているとはビックリでした。ああ、しょっぱいねしょっぱいなあと思いつつも面白い1冊でした。欲を言えば、せっかくの吹奏楽の話しかも大会の話なんだからもう少し演奏してるシーンの描写があってもよかったんじゃないのかなーと。『船に乗れ!』が同じく青春音楽小説でありながら音楽の話がたくさん出てきてたのを思うとそこら辺がちょっと物足りない気がしました。あとはなんといっても変人濃度がもう少し高ければなあと(笑) 『退出ゲーム』の楽しさはそこらへんもすごく大きかったしハルチカシリーズの魅力のひとつでもあるんだもの。

「なんだか偉そう。じゃあ大人って何なのよ?」
(中略)大人の定義か…。意外と難しいぞ。酒と煙草と仕事。これじゃあ彼女は怒るだろうな。もっと真面目に考えよう。自立、責任、義務、権利。それらは世の中の弱者にどう当てはまるのかが疑問だ。
「そうだな……。目の前にある全ての事を受け入れる覚悟ができた時、初めて俺たちは大人になれると思う」
(中略)大人になることは、必ずしも年齢や経験によるものではないんだ。当たり前のように受け取ってきた無償の愛を、次の誰かに捧げることができるかどうか。

「空想オルガン」からの引用。これだよ、これがあるから私はハルチカシリーズが好きなんだと思うの。日常ミステリとしての面白さやキャラクターの楽しさも大好きだけど、こういう響く部分を持っているから私は読むのだろう。私はちゃんと大人になれてるのかな。たくさんの人からもらったものを他の誰かにあげることはできてるのかな。

*1:ギャルバンドの略。楽器までデコってる。