モノレールねこ

モノレールねこ (文春文庫)

モノレールねこ (文春文庫)

人間の優しさであったり温もり、繋がりを描いた8つの短編を集めた短編集。今の私の気分にぴったりの本でした。いつもは読後感悪い露悪趣味的な本とか大好きなんだけど今はそういう気分じゃないの。なんていうか引きずられちゃいそうで怖いというか。よって読後感の良さというのは本選びの重要なポイントだったりしてます。そういう意味では今の時期に読めてよかったなあと思います。震災前に読んだらそこまで引っかかることはなかったかもしれないけれど、今はこういう話が私には必要なのです。やっぱり本って何を読むかも大事だけど、いつ読むかも大事だよなあと改めて思いました。
8つの短編の中では「シンデレラのお城」がちょっと毛色が違う話でした。読後感の良さを大事にしたほかの話に比べると「ええーっそっち側行っちゃうの?」と。世にも奇妙な物語風味だなあとも感じました。
私が好きなのは次の二つの短編。「セイムタイム・ネクストイヤー」はオチは読めるっちゃ読めるんだけどでもそんなのどうでもいいって思える話。ウソは嫌いだけど優しいウソは嫌いじゃない。人間ってちゃんと他人に優しくなれるんだなあと思うと心の中がじんわりと暖かくなってきます。「バルタン最期の日」は世にも珍しいザリガニが主人公の話。つり上げられたザリガニがそこの家で飼われることになったんだけど家族っていうのはなんて不器用なものなんだろうなあと思いました。しかし、不器用だけどもやっぱり暖かい。短編集を締めくくるのにふさわしいお話だと思いました。