人質カノン

人質カノン (文春文庫)

人質カノン (文春文庫)

都会にひそむ寂しさを浮かび上がらせた短編を7つ収録した短編集。長編に比べると印象が薄い短編集だけども、粒ぞろいだなあと思いました。「八月の雪」「過ぎたこと」「生者の特権」の3つがいじめをテーマにした短編となっています。その中でも「八月の雪」が一番好みでした。世の中理不尽な事ばかりだし不条理だって思うこともたくさんある。だけどある事をきっかけに祖父を媒介にそれを乗り越えていこうとする主人公の少年の姿が眩しく読後感のよいお話でした。地味ながら秀作だなあと思います。