踊るジョーカー

踊るジョーカー―名探偵 音野順の事件簿

踊るジョーカー―名探偵 音野順の事件簿

引きこもり名探偵音野潤が遭遇した事件を描く連作短編ミステリ。一見不可能犯罪と思われる事件を探偵音野潤が解決するお話。特に取り立てて心に残る部分があるって話じゃないけれど、サクサクっと読める本でした。やっぱり探偵&ワトソンコンビはいいわ。以前デビュー作の『「クロック城」殺人事件』を読んだ時はまあこれが合わないのなんのって。もう二度とこの作家の本は読まない!って思ったものでした。久々手に取ってみたら作風が変わっててすんなり読めちゃいました。

「人を殺すのはいけないことだよね……」
「ああ、それは絶対にいけないことだ」
「人が殺されて、何事もなく世の中が回っていたとして……すべてが丸く収まっていたとして……それでも犯人を告発するのはいいことかな?」
「いいか悪いかの問題ではないな。やらなきゃいけない。それが『正しい』ってことだ」
「名探偵は『正しい』?」
「そうとも限らないが……」
人生を懸けたトリックで他人を殺害し、運命を変えようとする人々。探偵はその運命を矯正する力を持つ。それだけに躊躇する気持ちはわからないでもない。名探偵は他人の運命を破壊するだけの力を持っている。

探偵とワトソン役であり語り手である作家との会話。こういう会話をさらっと入れてきちゃうとこは好き。事件に関係する話ではないのでなくとも成立するんだけどこれがあるのと無いのとで印象が違うのでいれて正解かと思いました。