五色沼黄緑館藍紫館多重殺人

五色沼黄緑館藍紫館多重殺人 (講談社ノベルス)

五色沼黄緑館藍紫館多重殺人 (講談社ノベルス)

アホだ、アホすぎる(褒め言葉)。さすがバカミス界の小林幸子。やる事が他の作家さんとは一味もふた味も違います。『三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人』で極めた世界を更に突き詰めた今作を書く労力を思うとすごいと思います。だってこれ思いつく人はいても書く人は普通いないもの。この作品を書くための労力思うと気が狂いそうだし。ネタばれになるので言えないけど、とにかく手間はかかってます、めちゃくちゃ。ええ、手間はね。これは好き嫌いはっきり分かれるバカミスだと思うけど私はこういう突き抜けたアホさは大好き。誰ひとり進もうとしない道をひたすら爆走している倉坂鬼一郎はすごい、ただそれだけです。最後のページの脱力感の半端なさはバカミス界の小林幸子の称号を持つだけあるってものですよ。

「お言葉を返すようですが、ミステリーの死者というのはだれも彼も作者の都合のいいように死んでくものなんです。もし彼らが不平を述べだしたら、そりゃもううるさくてかなわんくらいになるはずですよ」

まあそうだわなーと(笑) メタ構造になっている今作ならではのセリフ。今作では殺される人がまあなんていうか都合のいい死に方するんですよ。こんなうまくいくのだろうかっていう死に方。それをこういうセリフで切って捨てるなんてねえ。