優しいおとな

優しいおとな

優しいおとな

ストリートチルドレンの話。いつもの桐野作品とはちょっと違った雰囲気の作品になっています。扱ってる題材の問題もあるけれど、主人公が少年だからなのかもしれません。これが少女の話であったならば、だいぶ趣が違っていたのではないのかと思います。性の話を扱わざるをえなくなるだろうし。今回はあえてそれを描きたくないが故に少年を主人公にしたのかなーと思いました。

おとなは三種類だ。優しいか、優しくないか、どっちつかずか。優しいおとなは滅多にいない。優しくないおとなからは、すぐ逃げろ。でも、一番僕たちを苦しめるのは、どっちつかずのやつらだ。しかも、そいつらは数が多い。絶対に信用するな。

これは本当に耳が痛いです。私は間違いなく、彼らをもっとも苦しめるであろうどっちつかずの人間です。滅多にいない優しいおとなになれたらいいのだろうが、私ごときが思ったところでなれるくらいならばこの世はとっくの昔に優しいおとなで溢れてるはずでしょうね。優しさというのはとても難しいもので万人に振りまくのは容易ではないと思うのです。

「その通りだね。大事な人がいると、どうして自分のことしか考えられなくなるんだろう」
今のケミカルだって、息子を取り戻すためには何をしたって構わない、と決意しているはずだ。愛情は深ければ深いほど、どうでもいい他人を傷付ける力が強大になる。

愛情って言いかえれば執着なのではないのかと私は考えます。だから、他人を傷つけることもそのためならばできるようになったりすることもある。愛って欲深いものだなあと思います。アガペーなんて中々持ち得るものじゃあないね。