評伝 ナンシー関「心に一人のナンシーを」

評伝 ナンシー関 「心に一人のナンシーを」

評伝 ナンシー関 「心に一人のナンシーを」

ナンシー関がなくなってもう10年にもなるのが信じられないです。ナンシーが大好きで単行本になるのが待ち切れず文春と朝日のナンシーのコラムを毎週立ち読みしてた頃*1が懐かしくてたまらない。テレビ見ながら「これはナンシーに消しゴム彫って欲しい!」と幾度となく思ったことか。でも、もうわたしたちはナンシーが新たに書く文章を、新たに彫る消しゴムハンコを見ることができない。その喪失感ったらないですよ。私にとってはひとつの時代が終わったも同然でした。ナンシーがなくなった当初、きっと私が生きている間にはナンシーのようなテレビ評を書ける人には出会えないだろうなあと思っていたけれど、それは今も変わりません。ナンシーはオンリーワンだった。
この本ではナンシーの生い立ちから仕事を追いかけ、ナンシー関という人を色んな角度から見ていこうという本です。なるほどなあと思う反面、ナンシーがもし太ってなかったら消しゴムハンコを彫ってはいなかっただろうとか男性だったらもっと違ったほうへいっていただろうというのにはちょっと首をかしげました。ナンシーが持っていたユニークさはそんなことで簡単に揺らぐようなものではなかったと私は考えます。あの素晴らしい視点の持ち方やもののとらえ方は、そういったこととは切り離されたものだと思うのです。だからたとえナンシーが痩せてようが男性であろうがあのテイストは変わらなかったはず。
ナンシーがこんなにも早くに亡くなったのが悔やまれてたまらないが、私たちはナンシーのいない今を生きていくしかないのだ。さよならナンシー。私はいつまでもあなたの書く文章と消しゴムハンコが大好きでした。

*1:買えよって話ですがね。でも親父週刊誌って他に読むとこあんまないんだもの。あと毎週ではなく毎月だが『噂の真相』も立ち読みしてた。だってナンシーが連載してたんだもの。単行本や文庫は買ってたので許してください。