リアル・シンデレラ

リアル・シンデレラ

リアル・シンデレラ

不遇の少女時代を送りながらも魔法使いのおかげで舞踏会に参加して王子様の花嫁となったシンデレラ。幸せを勝ち取った女性の象徴として扱われる彼女だけど果たしてそれはどうなのだろうか。そういったところからこのお話はスタートしています。まずもってプロローグに書かれているシンデレラ論がぶった切ってて面白いです。

「おれ、この人を応援できなかった。この人は継母や連れ子から意地悪をされるけど、彼女たちがしたことと同じ意地悪で下品な事を、この人もやり返すじゃん。(略)
この人が、<いい>とか<すてき>だと思ってることや望んでいることは、継母とその連れ子と同じなわけじゃない?
つまりこの人の価値観と、継母たちの価値観は寸分違わないから、エグイ合戦ものにしか見えなくてさあ……」

「こういう意地悪をだれかにされたら、あなたはその倍の意地悪をやり返しなさいと推奨する話なのかと考えたよ」

そうかーそういう読み方するのもありなのかーといった感じ。目から鱗でした。こういう読み方してもいいなんて思いもしなかったもの。確かに言われてみればシンデレラで描かれている幸せは一元的です。見目もよく地位も名誉もお金もある男性と出会って見初められて結婚して優雅に暮らすのが女の幸せって描かれてるんだもの。でもね、本当にそうなのかといえば違うと思うんです。幸せってもっと色んな形があっていいはず。

「おれ、幸せっていうのは……、幸せっていうか美しいっていうか、善きことっていうか……そういうのって、泉ちゃんみたいな人生だと思うんだよな……」

泉ちゃんは不遇の少女時代を送ります。不遇の少女時代という意味では彼女の人生はシンデレラと被る部分があります。しかし彼女のその後はシンデレラとは全く違う人生です。はたから見たら不幸そのものでしょうね。かわいそうな人と思われてるならばともかく、不気味ですらあると思われてるあたりがなんともいえないです。だけどね、幸せっていうのは一通りしかないものじゃないと思うんです。泉ちゃんには泉ちゃんの幸せがあった。女性の幸せとは各あるべしと決めつけてる人には理解できないだろうけど。
リアルシンデレラというよりもアンチシンデレラといった感じのお話でした。終わり方が「ん?」って感じではあったけど中々興味深く読むことができました。