追憶のかけら

追憶のかけら (文春文庫)

追憶のかけら (文春文庫)

自殺した作家の手記をめぐる話なんだけど、事件の黒幕のいやーな悪意にあてられてげっそり。面白くなかったということじゃあないんです。黒幕が主人公をはめた自分本位な悪意が怖かったというだけの話です。でもって更に怖いのは、この黒幕話が通じないんですね。自分のつまんない凝り固まった価値観だけでしかものをはかれない人なのです。だから自分がしたことが悪いことだなんて一欠けらも思ってないし、むしろ最愛のもののためにこれくらいの事をするのは当たり前でしょって平気で思ってる人物。あー怖い、言葉が通じないのって本当に嫌だ。そういう意味では、ミステリでありながら事件の顛末については私はホラーに感じました。本当に怖いのは幽霊じゃなくて生きてる人間ですね。