ミサキア記のタダシガ記

三崎さん初のエッセイ集。いつも少し不思議なお話を書かれている三崎さんがどんなことをエッセイで語るのか興味津々でした。読んでみたらなるほど、小説での三崎ワールドのもとみたいなのがちらちら顔見せしていました。
私がこの本を読んだ一番の発見は三崎さんがナンシー関を敬愛していたことです。ナンシー関といえば切り口鋭い多数のコラムを書いていたのですがそのうちの多数を占めていたのがテレビに関するものでした。三崎さんってあまりテレビとか見ない人なのかなーと思っていて、そしてエッセイの中でテレビはあまり見ないと書いてあったのでなんていうか意外でした。この本の最後で三崎さんは居酒屋甲子園を見に行った話を書いています。そしてそこでナンシーの著書『信仰の現場―すっとこどっこいにヨロシク―』が引き合いに出しています。『信仰の現場』はテレビ批評の本ではなく「わらっていいとも」「矢沢栄吉のコンサート会場」「正月のデパートの福袋売り場」などなどの現場にナンシーが出向きその様子をレポしたルポタージュの本。熱狂する人とそうではない人たちがぱっくり別れるような現場を想定して彼女は赴いていたのです。私はテレビ批評も好きだったけど、こういうナンシーも好きだったので三崎さんが読んでいたということが嬉しかったです。ナンシー関を愛していた人は数いれど第二のナンシー関だと言われている人は未だにいません。彼女はそれほどに唯一無二の書き手でした。たぶん、同じやり方をまねただけじゃあダメなんでしょうね。ただのつまらないサルまねの文章にしかならないから。だからナンシーを心にとどめた書き手は違った形で世に出て活躍するのではないのかと思っていたのですがそのうちの1人が三崎さんだったのですね。