UNTITLED

UNTITLED (一般書)

UNTITLED (一般書)

完璧主義で決められたルールに厳しい長女である桃子の物語。読んでてぞっとしました。主人公桃子の視点で物語が進んでいくんだけど、最初のうちは桃子サイドに立ってお話を追っていたはずが徐々に違和感を覚え、読み進むに連れてザラザラした触感でいっぱいになっていきました。物語の始まりでは、桃子は正しい人として登場します。彼女の周りには正しくない人たちがいてそれによって桃子のリズムが乱され、彼女の完璧主義が徐々に狂っていきます。
完璧主義で正義感にうるさい人というとちょっと面倒くさいところがあるけれど、そんなに悪い人ではないように感じるものです。だけど、桃子に対して徐々につのるイライラは彼女が自分の立ち位置から1ミクロンも動かずに自分の価値基準でのみ人を断罪していくからなんでしょうね。自分は安全圏に置いておきながら、他人には厳しくってやっぱりもやもやするもの。自分は完璧主義で社会的に正しい人で間違ったことは何一つしていないと言いながらもそうではない桃子。たぶんだけど、彼女はこういう荒療治をしない限り、ずーっと変わらないんでしょうね。というか今後も本当の意味で変わることができるのかどうかは怪しい気がします。
こういう物語だっただけにお話の畳み方にはちょっと驚きました。こっちへ進んでしまうのかと。正しくなければならないはずの桃子が現実と向き合うにはこういう形をとるしかなかったのかもしれません。これを救いととるか、彼女の終わりの始まりととるかは受けて次第かなあと思いました。