漁師の愛人

漁師の愛人

漁師の愛人

5編の短編を収録した短編集。うち3篇はプリンにまつわる少年の話、それとルームシェアする女たちと震災の話、タイトルにもなった漁師の愛人となった女の話になっています。私は一番好きなのは「あの日以降」。東京でルームシェアする女たちの震災後の日々を描いた話です。震災から3年がたち、震災を扱った小説も徐々に増えています。どの角度から描くのかによって雰囲気はだいぶ変るんだけど、私はこういう描き方もいいなあと感じました。何も仰々しく描くことだけが震災を描くことじゃあない。
それにしてもやっぱり文章を読むこと、それ自体を楽しめる小説っていいなあって改めて思います。小説読むんだもの、心地よい文章を読みたいじゃないですか。思わず口に出して音としても楽しみたくなる、そういう文章って素敵だなあって思うのです。