村岡花子と赤毛のアンの世界

村岡花子と赤毛のアンの世界

村岡花子と赤毛のアンの世界

翻訳家村岡花子を5つの切り口から紐解くことにした特集本。編集は孫で作家である村岡恵理。収録されている文章がバリエーションに富んでいて読み応えがあって面白かったです。評論であったりエッセイをいろんな方が描かれていてそれが興味深かったですね。
5つの切り口のうち最初に語られるのが赤毛のアンについて。最もページを割いているのもこの特集です。多くの人にとって村岡花子とは赤毛のアンを日本に紹介してくれた人です。続いての特集は家庭人としての村岡花子。子供時代の回想であったり娘として、母としての彼女の姿が浮かび上がってきます。その次が子供たちのためにと童話を描いたり家庭図書館をやっていた村岡花子の特集。4番目に子供からさらに一歩成長した少女たちのために彼女がした活動についての特集が組まれています。最後に村岡花子の交友録についてページが割かれています。
村岡花子の文章を色々と読むことができたのはとても興味深かったです。赤毛のアンについてのエッセイ、家庭人としてのエッセイ、少女のためのブックレビュー、友へあてた手紙、彼女が描いた童話などなどが収録されています。
私にとっての村岡花子って多くの人にとってそうであるように赤毛のアンの翻訳者であってそれ以上でもそれ以下でもありませんでした。朝ドラ見てると「いい子ちゃんなんだけどあまり主体性のない子」という風に感じてたんだけど、実際はそういう人ではなかったようですね。まあ、フィクションと史実を一緒にしたらダメなのは百も承知なわけですがそれにしたってずいぶんと違ったものなんだなあと思いました。村岡女史は時代のオピニオンリーダーとして色々な活動をしていくんだけど、その芽は女学校時代にはすでにあって婦人運動をしたりしてたそうです。翻訳家としての彼女を支えたのは英語力もだけど確かな日本語力にあってその目も女学校時代にあったものでした。女学校時代に女流文学形と交流していたのはとても大事なことです。
ドラマでは村岡印刷として登場する福音印刷は聖書の印刷をしていて日本のキリスト教会では知らぬ人はいないような名前だったそうです。もちろん村岡家はクリスチャン。今のところ、キリスト教には深入りした描写はないけどドラマではどうするんですかねえ。村岡女史は子供の頃は生きるためにキリスト教を選ぶしかなかったのがあることを契機に自らキリスト教を選びとるという人生を送るわけですが、ここら辺がちょっと不安。
明治から大正、昭和と激動の時代を駆け抜け幾多の荒波を乗り越えドラマティックな人生を送った村岡花子。本気でやれば結構骨太なドラマが出来上がるはずなのに現状見てるとちょっとモヤモヤが晴れなくてどうしたものかと思ってしまいます。いい題材であればそこからいい物語を作り出せるかと言えばそうとも言えないのは当たり前なんだけどちょっと色々考えてしまいます。