笑うハーレキン

笑うハーレキン

笑うハーレキン

ここ最近、文学っぽい作品が続いていたけれど久しぶりにエンタメテイストの道尾作品でした。こういうの好きだなー。疾走感のある物語、弱者への目線の配り方、どちらも道尾作品の大事な鍵になっています。初期作のような大どんでん返しがあるがちがちのミステリではないけれど、作家としてのキャリアを積み重ねてきたからこそ描かれる物語は心地よく響いてくるものです。
ちなみにタイトルにあるハーレキンですが、道化師の総称だそうです。道化師に涙を描くとピエロになるので、ハーレキンは笑顔の道化師ということになります。

自分を守るため、誰かを守るため、みんな懸命に素顔を隠して生きている。そうして人の顔や心を鎧っていたものが、ある時剥がれ落ち、内側がむき出しになったとき、東口が厄病神と名付けたものが貌を持ち、言葉を騙る。道化師たちを操ろうとする。だから人には仮面が必要になる。どうしたって、それを被って生きていかなければいけない。――ただ。
どうせ素顔を覆うなら、笑顔で覆ったほうがいい。

私がもっとも好きな文章はこちら。ピエロとハーレキンは表裏一体です。どちらの仮面をかぶって生きていくのか、それは人それぞれ。だけど同じ仮面をかぶるならば笑っていられるほうのがいいんじゃないか。そういう突き抜けかたをできるのはエンタメとして気持ちがいいですね。