大奥

大奥 11 (ジェッツコミックス)

大奥 11 (ジェッツコミックス)

怪物、徳川治済

帯にあるこの言葉にゾワっとした大奥11巻でした。

ならば逆にお尋ねいたしますね
母上
なぜ人は嘘を吐いてはいけませんの?
最後まで吐き通せば誰にも分からないことではありませぬか
馬鹿みたい

ああそれから最後にもうひとつ
私が根付を盗みその罪を治之になすりつけたとして
私に何の得があるのかとあなたは言ったわね
理由を教えてあげる
退屈だったからよ

彼女の世界に存在するのは、ただ一人自分自身だけ。それ以外の人間などとるに足らない存在である。
治済にとって自分以外の人間は駒みたいなものなんだろうなあと感じます。彼らが自分と同じ人間だとは思っていないのでしょう。だからこそ、彼女は顔色ひとつ変えずに我が道を進んでいきます。彼女は自分のいるステージには誰も登らせません。何故なら彼らはただの駒だから。駒以上の価値などあるわけがない。身内だから特別という感情もなく子供も孫も駒や退屈しのぎの道具でしかありません。肥大した自己を拡大しながら彼女は虫でも潰すみたいに周りの人間を消していきます。それを繰り返しながら彼女はいつしか権力を手に入れます。しかし、権力を手に入れても残ったのは退屈だけ。彼女が行き着くのはどこなのでしょうか。そして行き着いたとして彼女はそこで何かを得ることがあるのでしょうか。
治済は私にとってホラーです。こんな人がいるのかもしれないと思うとゾッとします。でもいないとは限らないあたり、すごく怖い。幽霊よりも生きてる人間のがずっとずっと恐い。