本の寄り道

本の寄り道

本の寄り道

翻訳家である著者による書評集で240冊の本を紹介しています。読みながら、私がなんで翻訳もの苦手なのかがうっすらとわかったようなわからないような気持ちになりました。普段私が読む本と被る本被らない本と色々とあったんだけど、好きのベクトルが違うんだろうなあと。どっちがいいとか悪いじゃなくてただ違うだけ。私も翻訳ものを楽しめたらもっと楽しい読書生活が送れるんだろうけどなあ。

わたしたちが少女と呼ばれていた頃

碓氷優佳シリーズ第4弾で彼女の高校時代を描いた短編を集めた短編集。途中までは碓氷優佳はやはり高校時代から頭の回転が早いというか観察眼が鋭いというか少ない情報からよくここまで話膨らませて考えるお嬢さんなことですねえという感じでした。要するにこういう子が身近にいたら勝手にあれこれ推測されて面倒だなあというとこです。それがラストで語り手である碓氷優佳の友人が彼女の根底にあるものに気がついて怖くなるというとこに、そうそうそれこそが碓氷優佳の本領よねと納得しました。過去のシリーズ読んで何があれってそこだもの。ただの頭がいいだけの女じゃないからこそ、碓氷優佳はシリーズ物のヒロインとしての価値があるのだと思うんです。好き嫌いは別として。怖い女だよ、碓氷優佳は。

失恋ショコラティエ

前半は軽快に飛ばしていた今回。脚本も演出もとにかく軽め軽めでテンポよく楽しく進んでいきます。アホらしくも愛おしい日常。でもそういう日々がずーっと続いていくとは限らないのです。前半の軽さとは一転して吉岡とソウタの対峙は緊張感のはらんだものとなりました。妻に家出された男と長年片想いし続けた女にやっと相手にされた間男の男。2人はお互いに相手を探りながら自分の出すカードを慎重に選んで対話をします。一見穏やかに見える会話の裏では表情に出ないようにじりじりしてるのがわかって見てるこちらにも緊張感が伝わってきました。
しかしこの2人結局のところはサエコのことなんて全然わかっちゃいないんですよね。サエコという沼は深くて底が知れない恐ろしさがある。だからサエコ沼にからめ捕られた人間はみな、堕ちていく。たぶんサエコ本人すら底の見えない沼に沈んでるんでしょうね、恐ろしい。最終回に向けてはソウタがどうするのかというよりもサエコが自分の中にある底なしサエコ沼にどう向き合い、どう生きてくのかがカギになる気がするけどどうなのかな。