シャボン玉同盟

シャボン玉同盟

シャボン玉同盟

中学生の少年少女を主人公に据えた短編4編を収めた短編集。日常にちょっとファンタスチックなものが入りこんだ不思議な物語たち。
「ジグソー・スイッチ」
ある日突然おへそに生えたひもを引っ張ることによって全身をバラバラにできるようになった女の子の話。バラバラになった体を元に戻すたびにいらないパーツを捨てて完璧な自分になろうとするあたり、中学生ぐらいの頃ってそういう身体嫌悪が出る時期だったよなあと思い返しました。子供の頃の自分と違って、気持ちだけを置いてけぼりで体がどんどん変わっていくのをうまく受け入れるのは実は難しいことだと思うんです。おちの部分はありがちといえばありがちだけど、私は好きです。
「シャボン玉同盟」
シャボン玉の中にいるゲームのキャラクターの女の子に恋してしまった男の子の話。潔癖なのはなにも女の子だけとは限りません。潔癖な男の子だって当然、います。だけども、いきつく先が2次元ゲームオタっていうのはある種の皮肉なのか。
「世界を征服する前に」
目に見えない段差を歯がゆく思っている女の子の話。あの子は自分よりも上だとかこの子は自分と同じくらいだとかでもそっちの子は自分よりも下な気がするとかそういうレッテル貼りって何も中学生の女の子だけの話じゃない。小学生だってそうだし、大人だって同じだ。そういう意味では私は一個も笑えれない。この短編集の中で唯一、ファンタジー<悪意だったのが「世界を征服する前に」。最後、あんなおちだとは思わなくて面白かったです。この話が1番好きなあたり、自分の性格がいかに歪んでるのかがわかって笑える。いや、笑ってる場合じゃないか。
「連れ恋」
心の中で卵を飼っている男の子の話。4作の中で最も恋愛度数が高い話でした。ああもう、中学生の恋ってなんてかわいいのかしら。普段恋愛小説をあまり好まない私でも胸がキュンキュンしました。頑張れ、中学生!
YA大好きな私的には満足の1冊でした。リアル中学生だったらどう読んだのかなーとかって気にはなったものの、そういえばあの頃って体と心のアンバランスさで色々めんどくさいことになってたよなあって辛気臭くなりつつも、楽しい読書でした。ああでもやっぱこういう話は10代の子に読んでもらいたいなあ。大丈夫、自分ってちょっと変かもって思ってるのは自分一人だけじゃなくてみんなそうだし、大人たちもそうやって大きくなったんだから。そう、子供たちに言いたくなりました。