リテイク・シックスティーン

リテイク・シックスティーン

リテイク・シックスティーン

主人公沙織は友達の孝子から12年後の未来から自分はやってきたのだと告白される。12年後の孝子は色々と嫌なことが重なり人生をやり直したいと思い、気がついたら高校1年生の春にやってきたというのだ。そんな友人と過ごす沙織の1年間の話。
ドラえもんの秘密道具の中で何が欲しいかといったら、色々あるけれど私はもしもボックスが欲しいと思います。何も大胆にもしも魔法が使えたらとかもしも空が跳べたらとかじゃなくて、もしもあの時こうしてなかったらどうだったんだろうとかっていう些細なことをかなえたいがために私は欲しかったのです。そういう意味では私は孝子の気持ちがすごくよくわかる。別に私は孝子ほど現状を否定して過去に戻りたいとは思わないけれど。でもそれは今ある程度それを飲み込んじゃえてるからであって、以前すごく強く思ったことがあるのは事実です。あーもう、あそこに戻ってリトライできるなら絶対この道は選ばないのにとか、もし戻れるのならば今度こそは失敗したくないという孝子の気持ちにすごくシンクロしてしまいました。
『リテイク・シックスティーン』では主人公沙織の一人称で話が進んでいきます。故に未来からやってきたという孝子は沙織の目を通して語られることになっています。でも、これがよかったと私は感じました。そのことによって孝子を少し客観的に見られるし、痛さが軽減されたようにも思えました。豊島さんの高校時代を振り返ったエッセイ『底辺女子高生』と合わせて読むと、孝子は豊島さん自身を鏡に写したものだと思われます。でもってこういう物語を描いたことで何かに蹴りをつけたかったのかなーとも。
ゆっくりお休みをして、またいつか豊島さんの作品が読める日が来るのを待ちたいと思います。あくまで休筆であって、断筆じゃないんだものね。