サウスバウンド

サウス・バウンド

サウス・バウンド

子供は親を選べない、これはどうしようもない真理です。大富豪の家に生まれるのも真逆の家に生まれるのも優しい両親の元生まれるのもそうでない両親の元生まれるのも運次第。第1部を読んで私が感じたのはこのことでした。親も含めて生まれ育った環境を選ぶというのは子供には不可能。だから第1部を読んでる間は正直つらかったです。二郎にとって、親が元活動家であることは自分が好きで選んだことじゃありません。先生相手に「そもそも学校に行く必要などない」「あんたはどう思ってるんだ、このシステムを」などとまくし立てて先生から色眼鏡で見られるというのは学校と家という2つの世界しか持つことができない小学生には辛すぎます。理不尽といってもいいぐらい。だって自分で選んだことじゃないのだから。不良中学生に絡まれるくだりも同じく理不尽さを覚えました。でも世の中ってそういう理不尽さで成り立ってるんだよなあとも感じました。
第2部に入って家族の置かれている環境が変わってからは元活動家の父に対しての見方が変わってきて割と爽快に読むことができました。読み進むにつれて色々な人を巻き込んで好き勝手に持論を展開してきただけの父が「俺はこういう人間だけど、お前はお前の考えがあっていいんだぞ」的な面が出てきてそこにほっとしたりもしました。もし私がこの一家の元にうまれていたらと思うとそれはちょっと勘弁だよなあと思うものの、心地よい読後感の本でした。
「サウスバウンド」って映画化されてたんですね。父をトヨエツ、母を天海祐希と聞いては俄然気になるところ。正直この2人のイメージは読んでて全然なかったんだけど、悪くはないと思います。ていうかこんなかっこいいお父ちゃんにお母ちゃんならば私は全然ありだ(笑)