光

エッセイを読んだら無性に小説を読みたくなって積読の中から出してきたのがこの本。抱腹絶倒エッセイとは真逆の重さに驚きながらも一気読みでした。白しをんと黒しをんと色々とあるけれどこれは間違いなく黒しをん。それもいちばん黒いの。『まほろ』シリーズや『風が強く吹いている』といった白しをんとは全く違った仕上がりになっています。物語としてはしをん版『白夜行』といった雰囲気だけども、受ける印象は少し違っていました。男性キャラの印象はものすごく違うといったことはないけれど、女性キャラはやはり東野作品とは趣が違います。美花が語り手となる章はなかったものの、心情をぶちまけ突き放すところはあとはなるほどーと思いました。あとは南海子の造形。ある地点を境にしての彼女の変化はしをん作品だからこそなのかもしれません。
作品によって百面相のように変化するしをん節。その引き出しの多さに驚きます。しかし色んな顔があっても通じるところはきっと同じなのでしょう。今後もどんどん読み進めていきたいです。