君の望む死に方

君の望む死に方 (ノン・ノベル)

君の望む死に方 (ノン・ノベル)

倒叙シリーズ第2弾。今回は犯人と犯人によって殺されることを望んでいる被害者、探偵の三つ巴の様子を事件が起こるまでじっくりと描いた話になっています。いやはやちょっと変わった設定のミステリ書くのが本当にうまいなあと思いました。他の作家さんはまずこういった設定を思いつかないもの。癌により余命が少ないことを知った日向は自分を恨んでいるであろう盟友の息子・梶間によって殺されることを望みます。そのために色々な仕掛けを用意します。梶間も復讐のためチャンスをうかがうんだけどこれがまた探偵役である優佳によってことごとく無力化されていくという。読み進んでいくうちに、「あーもうお互い殺されたい・殺したいで利害一致してるんだから優佳邪魔なんだってば」という気になっていきました(笑) まあ、結局は冒頭のプロローグで書いてあるように事件は起こるわけだけど。
今作での探偵役の碓氷優佳は倒叙シリーズ1作目の『扉は閉ざされたまま』でも登場しています。前作ではまだ多少のかわいげがあった優佳だけど今回は本当にかわいげのかけらもないキャラになってます。まあ前作では恋もしてたっていうのもあるんだけど*1。それにしても恐ろしい子だわ。絶対に敵に回したくないタイプ。『白夜行』の雪穂に代表される悪女タイプではない怖い女。理知整然と着実に相手を追い詰めていくので逃れようがないのがなんともいえないです。
倒叙シリーズはあと1作書いて3部作になる予定だということで早く次のが読みたいです。さて、次はどんな設定での倒叙になるのかしら。楽しみ。
以下ネタばれしてるので畳みます。
日向が梶間の母と一夜の過ちを犯したのが2か月前で梶間の母の妊娠を知ったとき彼女は妊娠三カ月であったので、日向はおなかの子は自分の子ではないと思うというくだりはわざとなんですよね? 日向は結婚はしたものの、子供はいないという設定なので妊娠週数の数え方を知らないが故にそう思い込んでいたんだろうなあ。でもたぶん梶間の父は日向。そう思うと、父は息子に殺されることを望み息子は父を殺して復讐を遂げたいと思うんなんて悲しいお話だなあと思いました。

*1:恋する女という意味ではかわいげはあったが恋する女が故の恐ろしさもあった。