砂の王国

砂の王国(上)

砂の王国(上)

砂の王国(下)

砂の王国(下)

元エリートサラリーマンの主人公がホームレスに転落し、そこから一発逆転すべく新興宗教の教団を立ち上げる話。新興宗教の話と聞き、一体どんな感じかなーと思ってたらこの主人公、あくまで成り上がりの手段にしか思ってません。信心なんてありゃしない。教義よりも大事なのはインチキ宗教をそれっぽく見せることであったりシステムを整えることであったり。会社では嫌な目みたのでそうじゃないので儲かるもの作ろう→そうだ宗教にしようというわけなのです。たまたま彼の周りにいた教祖に仕立て上げるのにちょうどいい若者と腕はいいのにじり貧人生から抜け出せずにいた辻占い師をスカウトし宗教を立ち上げます。どんどん教団が大きくなっていく様やタイトルから想像できるような瓦解っぷりが面白かったです。特に終盤スピードあげての大暴走なんてこの本の読みどころだと思います。宗教だけじゃないと思うんだけど「集団」ってやつはある程度のところを超えるとそれ自体が意志を持った得体のしれない生き物へと変貌するんですよね。そういう不気味さってやっぱり怖い。
惜しむらくは伏線が生かしきれてなかったんじゃないのかなーというところ。元妻の話や母親の話が終盤もっとパンチ効いてくるのかと思ったらそこまででもなくあっけなくラストへいってしまったのが残念でした。面白かったのは間違いないんですけどね。