- 作者: 西加奈子
- 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
- 発売日: 2009/04/29
- メディア: 単行本
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中盤、きりこが赤ちゃんの頃にあったことのあるちせちゃんという子に再会して以降のとこが何ともかんとも予想外で面白かったです。ちせちゃんは早熟な体と性欲を持て余し気味で初体験を済まして以降、あっちこっちの男性と関係を結びます。しかしなかなか彼女を満足させる相手に出会う事ができず出会い系サイトを利用します。そんな彼女にもルールはあって、生理中はしないことと避妊はちゃんとすることの2点。しかし彼女はそのルールを破られてレイプをされてしまいます。被害を声高に叫ぶものの、事情を聞いた人たちは誰も彼女を相手にはしてくれません。そんなのはあんたが悪いって。
服を脱いで裸で横たわっていても、連れ込み宿でふたりきりになっても、女性が、場合によっては男性が本気で「嫌だ」と言えば、その気持ちを踏みにじるのは、強姦である。性交は、お互いがのぞんでするものであるべきだ。(中略)
「嫌だ」という人間の、その訴えを無視できるくらいの理性であるならば、初めからないほうがいい。
レイプの線引きって実はすごく難しいと思うんですよね。厳密に言いだすときりがないし。恋人間や夫婦間でもレイプって本当はあるっていうしね。でもやっぱり尊厳は守られてしかるべきものだと思うんです。それを言いたいがためにちせちゃんというちょっと極端な子を登場させたのかなーと感じました。このあとちせちゃんはAV女優に転身し、業界内からのレイプ作品一掃を目指して風変わりな作品に出てみたり、女優引退後にきりことともにAV会社を設立。あーこれは予想外だったわ。あんまりこういう事書きたくはないけれど、女性作家だからこそかけた作品なのかなーと感じます。男性作家さんだとこの感じは出せなかったかも。
人間、中身だけでも外見だけでもなくてそれらが合わさって1人の人間なんですよね。自分は自分、そういうものだ。でもそういう事を受け入れるには中々度胸がいったりして難しい。だってじゃなかったら自分探しなんてしないに決まってるよ。きりこにしろちせちゃんにしろ、デフォルメされたキャラクターをうまく使って書かれた物語だったなあと思います。興味深いお話でした。