ゾウの時間ネズミの時間

ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学 (中公新書)

ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学 (中公新書)

かつて、国語の実力テストの問題文としてこの本の一部を読み、面白いぜひとも全文を読んでみたいと思ってから早幾年。やっとこさ読むことができました。

こんな計算をした人がいる。時間に関係のある現象が全て体重の1/4乗に比例するのなら、どれでもいいから二つ、時間に関係するものを組み合わせて割算をすると、体重によらない数が出てくる。たとえば、息を吸って吐いて、吸って吐いて、という繰り返しの感覚の時間を心臓の鼓動の感覚時間で割ってやると、息を一回スーッと吸ってハーッと吐く間に、心臓は四回ドキンドキンと打つことがわかる。これは哺乳類ならサイズによらず、みんなそうだ。
寿命を心臓の鼓動時間で割ってみよう。そうすると、哺乳類はどの動物でも、一生間に心臓は二十億回打つという計算になる。
寿命を呼吸する時間で割れば、一生間に約五億回、息をスーハーと繰り返すと計算できる。これも哺乳類なら、体のサイズによらず、ほぼ同じ値となる。

このあと、ゾウは一見ネズミよりもずっと長生きに見えるが心臓の拍動を時計として考えたら生きる時間の長さは変わらないのじゃないのかというふうに文章は続いていきます。確かこの部分が問題文になっていたのだと思うんだけど、これは私には刺激的な発想でした。まずもって、自分にはこういった理系的発想がなかったのでそれに触れられたのが面白かったのです。
この本では生き物の体の不思議やデザインの限界と可能性をサイズという観点から見つめ直した本です。なるほどなあと今は亡きへーボタンを次々に押したくなりました。こういう事を知ったからといって別に何にも変わりはしないけども、物事をどういったところから見るのか、切り口次第で違う世界が見えてくるという感覚は好きだなあと思うのです。物語も好きだけど、こういう本もたまにはいいものです。