桐島、部活やめるってよ

語り手が違う連作短編の原作をどう映像化するのかなーと思っていたらば、なるほどこうきたのかと。原作と映画で設定が違うとこがいくつかあるけれど、物語の核の部分は変わっていなかったので私はこれはこれでありだと思います。モノローグが多い原作をナレーションをひとつも使わずにこんなにうまく映像化できると思ってなかったので見に行ってよかったなあと思いました。行くかどうか迷っていたけどもTLで評判がよく足を運ぶことにしてよかったです。
神木くんは『11人もいる!』の撮影から2日で映画の撮影に入ったそうだけど、スイッチをちゃんと切り替えてきてて、当たり前なんだけどプロの役者さんなんだなあと思いました。
橋下愛よかったなあ。『告白』もよかったけどこちらもよかったです。なんていうか存在感とか雰囲気あるんですよね。これって持って生まれたものなんだろうなあと思います。持ってる人は持ってる、持ってない人は努力で手に入るものじゃないという大事な鍵を今後大切に育てていって欲しいなあと願います。
宏樹役の東出昌大は掘り出し物でした。600人のオーディションから選ばれたそうだけど演技経験がなかったなんて思えないほど自然でした。宏樹役は大事な役だからプレッシャーもあっただろうけどそういったものを感じさせない演技でした。
大後寿々花も空気感がよかったなあ。原作のイメージ通り。そのまま飛び出てきたって感じでした。
客入りが悪く今一伸びてないそうだけど、私は好きな映画です。テレビ局が出資して作った映画でこういうものが作られてるなんてステキだなあと思うのです。
以下ネタばれしてるので畳みます。
映画は学校の中の話に極力絞ってあり、なおかつ前田と宏樹の交わる瞬間に焦点を絞ってるのでそれに合わせて設定であったり誰を前に出して誰を引っ込めるかのバランスが変わっています。あとは神木くんを主演に据えたということも大きいのかなーと。原作を読む限り、この群像劇からあえて主人公を一人選ぶのならば前田ではなく宏樹だと思うけど*1神木くんでは宏樹のイメージではないものね。前田を主人公に据えたことにより、原作では語り手の一人ではなく奥にいたかすみの存在感が大きくなっています。逆に語り手の一人でありながらも、エピソードが学校の外であったが故に実花は背景に沈んでるし。同じく語り手の一人でありながらも、前田・宏樹との絡みがあまりなかったので後ろに沈んだのが風介。でもまあこれは仕方がないのかなーと思います。時間が限られた映画であれもこれもと盛り込みすぎるとどうしても散漫になっちゃうしね。連ドラならば、もっと違った作りになったのではないのかと思います。
あとは変更点としては映画部が撮った映画のタイトル及び内容。これはなんとなく変えたわけじゃなく明確な意味を持っての変更ですね。それによってよりテーマがはっきりとしたと思います。
学校ってさ、人にもよるけど自由なようで不自由なとこだよなあ。あの中でうまく適応できる子ならばそんな事思いもつかないだろうけど誰でもそうじゃないもの。学校を一歩出ればそれとは違う世界が広がってるわけだけど、子供にはその一歩が出せないわけで。そういったもやっとしたものを思ったりしました。

*1:原作では宏樹視点の話から始まりラストの話も宏樹。