だから、子どもの本は面白い

だから、子どもの本は面白い

だから、子どもの本は面白い

子供の本を取り巻く状況について描かれた本。

子どもの本がおもしろいのは、どのような時代状況であっても、生きる希望を執拗にさぐり出し、人と人との結びつきの多様さと喜びに気づかせてくれる力を持っていることだと思います。

近年、大人の本と子どもの本のボーダレス化が進み、複雑な問題を抱えた子どもたちに寄り添うお話をとした結果、かつての児童文学とは違った作品が多く出版されるようになりました。希望を描くのが以前より難しくなってきたということもあるようです。だけど、それでも子供の本は希望を、生きる力を描いて欲しいという著者の思いに私は共感します。
生徒からの要望を受けてミニブックスを購入したところ、アンパンマンの本ばかり読んでいて他の本に興味を示さなかったある子ども、その子が学校司書に「小学校幼稚園にこの本が置いてあってずーっと読んでいた、あの頃はよかった」とぽつりと漏らしたという話があったそうです。その子はアンパンマンを通してかつての幸せだった時代を思い起こしていたのでしょう。それ以来、本の差別をやめどんな本であれ人は「何か」を求めて本を読むのだからその「何か」を理解し、より適切な本があれば紹介していきたい、本ではなく人中心に考えていきたいという学校司書の話には考えるものがあります。やっぱり私も子供と図書館行ったり書店に行ったとき、どうしても本の差別をしてしまいそうになることがないわけじゃありません。次女は文字で物語を追うよりも絵を見て楽しむほうのが好きだからどうしても眺める本が中心になりがちだし。長女は物語本好きなのはいいけど、『一期一会』シリーズを好むのにちょっと眉をしかめてみたり。だけど、何かしらこの子たちにとって惹かれるものがあるからこそ手に取るわけですよね。なので本選びを否定せず、「こういう本も面白そうだね」と言って他の本を紹介するように気をつけています。大人ってどうしても決め付けしがちなのでね。
ちょっと「むむむ?」と思う部分がないわけじゃないけれど、全体としては大人の独りよがりにならず子どもの目線に沿った本とのかかわり方について描かれてあると思います。本は一生の友達、たくさんの子供たちがそう感じてくれますように。