本の愉しみ、書棚の悩み

本の愉しみ、書棚の悩み

本の愉しみ、書棚の悩み

作家である著者が本について書いたエッセイ集。

わたしが本書を書きはじめたのは、まるでトースターのことでも話すよう日本について論じた書物が多いことに、疑問を感じたからだ。この銘柄のトースターはあの銘柄のより質がいいだろうかとか、二十四ドル九十五セントのこのトースターはお買い得だろうかとかいったことばかり。自分が買ったトースターのことを十年後にはどう思っているだろうとか、古いトースターへの愛着についてはいっさいふれていない。読者を消費者とみなすこのやりかた――わたし自身も書評で何度もやっているが――は、読書のいちばん大切な点を完全に無視している。つまり新しい本を買いたいかどうかではなく、長年つきあってきた本、わが子の肌のようにその手ざわりや色やにおいになじんだ古い本とのかかわりを、どう保っていくかという点だ。

引用したように、この本は本について書いてあるが書評本ではありません。本がある風景について書かれたエッセイ集なのです。著者は本にとても思い入れがあり、たくさんの書き込みをしたりします。私は本に書きこみはしない人だし彼女とは本のつきあい方が違うけど、こういうおつきあいの仕方もあるんだなあと興味深かったです。結婚5年目にして初めて夫と彼女の蔵書を整理し重複するものをどうするのか、本をどういった基準で並べていくのかの話もこれまた面白かったです。なるほどねえと。
本への愛にあふれた本でした。やっぱ愛だね、愛。