のろのろ歩け

のろのろ歩け

のろのろ歩け

北京上海台湾を舞台に異国にやってきた日本人女性の姿を描いた中篇3作を収めた中篇集。『小さいおうち』や『平成大家族』に比べると純文学色を強めた作品になっています。絲山秋子に似た作風というか文体のように感じました。最近読んでないんであれですが。
3作の中では「北京の春の白い服」が一番好みかなあ。中国で初めてファッション誌を作ることになった女性編集者の話です。初めてのことをやるのはそうは簡単にはいかないことです。そんな中彼女が奮闘する姿と変わりゆく北京の風景とが印象に残りました。ちなみに本のタイトルであるのろのろ歩けは「北京の春の白い服」の中に出てくる言葉です。「慢慢走」と書いて「マンマン・ゾウ」と読み意味としては「のんびりいけや」ってとこだそうで、作中で主人公が露天商の男性からかけられる言葉として出てきます。スピードをあげて大きく変わりゆく北京においてのんびりいけやという言葉がかけられるというのは面白いなあって思いました。