プールサイドの彼方

プールサイドの彼方

プールサイドの彼方

1989年に大学に入学したひとみの20年余りの日々を描いたお話。前半よりも娘りんの視点が出てきて以降のほうのが面白かったかなあと思います。それまではひとみと湖太郎の視点だけなんだけど、そこにりんの視点が加わることによって物語の奥行きが広がるんですね。そして同時に悲しみもまた奥行きを見せるんですね。一生懸命ひとみのためにいい子であろうとしたりん。もちろんそれはひとみのためだけではなく、りん自身のためでもあったのでしょう。だって子供は親がいなければ、大人に捨てられれしまえば生きていけないんだもの。どんなにぼろぼろになっても親に好かれていなければというふうに思ってしまうところがあるんだもの。でもね、子供を無意識に大人にさせてしまうのってやっぱりぞっとしてしまうんです。子供を子供のままでいさせてあげられないのは寂しいことです。物語の本筋とは少し外れるけれど、私はりんの物語がああいう形でとじたことがなんともいえない気持ちになりました。