ペンギン、長崎の海を飛ぶ!

今やペンギン飼育で有名な長崎ペンギン水族館ですが、その道のりには紆余曲折があり一筋縄ではいかなかったそうです。その歴史を現在の館長である楠田さんの目線で子供向けにわかりやすく描かれたのがこの本。
長崎ペンギン水族館の前身は1959年に長崎国際文化センター建設事業の一環としてオープンした長崎水族館です。当初はペンギンをメインにスタートしたわけではありません。が、日本の南極船事業の副産物としてやってきたペンギンたちの飼育が軌道に乗るに従ってペンギンの存在感が増していったのです。。ちなみにこちらで飼育されていたエンペラーペンギンのフジは28年も生きて絵本にもなり、とても長崎市民に愛されていたようです。キングペンギンの飼育下での最長記録であるぎん吉もこちらの水族館の人気者だったとか。39年9カ月も生きたというので驚きです。
そんな長崎水族館ですが、施設の老朽化や入場者減少のため経営が行き詰まり閉館を余儀なくされてしまうのです。水族館職員たちはとても悩みます。終わるため、お別れをするための仕事というのはとても辛いものがあります。が、そこで終わりじゃなかったのです。市民の署名運動などもあり、規模を縮小してのリニューアルオープンが決まったのでした。閉館は1998年3月、リニューアルオープンは2001年4月。3年の月日を経てリニューアルした水族館はペンギンたちと長崎の海をメインに模様替え。
リニューアルを機に楠田さんにはぜひともやってみたい夢があったそうです。それはペンギンたちを海に戻すこと。フンボルトペンギンの故郷のチリに行った際、とても心を強く動かされた楠田さん。飼育場しか知らないペンギンたちに自然の海を体験して欲しい、その世界初の試みを実現するには時間がかかりました。夢があるだけではうまくはいかないのです。しかし強いペンギン愛でその高いハードルを見事に超えていくわけです。ふれあいビーチでは毎日4時間半ほど十数羽のペンギンたちが自然の海を満喫しているそうです。
子供向けでありながらも、大人にも響くような内容で興味深い本でした。次女がペンギン大好きっ子で読んでくれというので読んだのですが私のほうのがとりこになったくらいかも。自然のビーチを満喫するペンギンたち、きっと楽しそうに過ごしてるんだろうなあ。いつの日か、海を泳ぐペンギンたちに会いにいきたいです。