はぶらし

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脚本家の鈴音が10年ぶりに再会した同級生の水絵とその息子を家に泊めることになった短い時間の話。ジワリジワリとくるいやーな感じがゾワっとくるお話でした。タイトルにある歯ブラシがその気持ち悪さを表すものなんだけど、これが実にうまいなあと思うのです。水絵たちが歯ブラシを持っていないというので鈴音が新しい歯ブラシを水絵たちに渡します。翌日水絵は歯ブラシを買って鈴音に返すのですが、それが新しく買ったほうではなく彼女たちが鈴音からもらったほうを渡すのです。そこに違和感を覚え居心地の悪さを感じる鈴音。こういうちょっとした違和感って実は大事なことなんですよね。「なーんか違う」っていう感覚は直感だから。
後味よくないけど、息子がせめてもの救いかなあと思います。それと同時にもしこの物語が鈴音の視点ではなく彼の視点であったならば更にきつい物語になっていたのかなあとも感じます。おとなしい子供として描かれていた彼が何を見て何を感じていたのかは細かな描写はありません。でも想像することはできます。子供は親を選ぶことができないという苦しさ、たまんないですね。