大奥

大奥 10 (ジェッツコミックス)

大奥 10 (ジェッツコミックス)

帯の「人は、病に、勝てる。」が泣かせるのなんのって。今回はいつもの大奥とは少し違い、医療マンガ的な面が前面に出ていました。赤面疱瘡を根絶するため戦い続ける人たちの生き様はかっこよかったです。それだけにあまりに彼らの運のなさ、時代の残酷さには辛いものがありました。天は彼らに味方してくれなかったというのがあまりに無情で。彼らのやったことは決して無駄ではないし、青沼のいうよう志さえ捨てなければ後世に意志をつないでいっていつか彼らの思いが実を結ぶ時がくるでしょう。そしてそれが幕末に大きな影響をもたらすはず。
近年再評価されているとはいえ、終始田沼意次が聡明な人物として描かれていたのが面白いなあと感じます。歴史は勝者によって書き換えられるものだから老中の職を追われた田沼の評価が高くはないのはわかります。しかし、田沼意次をこう描いたということはその後の寛政の改革をどう描くのかが楽しみです。
徳川将軍一子沢山であった家斉をどうするのかなーと思ったらなるほど、こうきましたかと。相変わらずうまいです。ちゃんと計算して構成練ってるからこそ、できる技ですね。それにしても治済は策士ですね。久通も策士ではあったけれど、彼女とは異なったものを感じます。久通も治済も邪魔なものを一人づつ消していって彼女らが思う人間を将軍の地位につけるのだが、なぜそうまでして将軍職が欲しいのかの動機が違うと思うんです。うーん、なんだろう久通には男性的なものを、治済には女性的な業を感じます。
さて、幕末に向かって終わりが見えてきたわけですがまだまだ先は読めないのが楽しいなあと思います。単純に幕府側が女性、新政府側が男性かと思ってきてたがそう簡単にはいかなさそうだしなあ。