深く深く、砂に埋めて

深く深く、砂に埋めて

深く深く、砂に埋めて

魔性の女有利子と彼女に魅入られて人生を踏み外していく男たちの話。語り手になるのは有利子の母と有利子の担当弁護士と有利子とともに事件を起こした男です。なので有利子は常に外側から語られており、彼女本人がどう考えていたのかどう感じていたのかについては最後まで分かりません。男を虜にするため、あの手この手のテクニック磨きに苦心してきたのか、それとも全く無自覚なまま心の赴くままに生きていただけなのか。どちらともとれると思うのです。無自覚なまま周りがどんどん狂っていくというほうのが私は面白いのでそっち説を取りたいとこですが。魔性の女って常に周りから囲まれているように感じるけど、周囲の人が勝手に彼女にいろんなものを投影してるような気がするので本当の意味では孤独なのかもしれない。虚像でしか見られない寂しさをどこかで埋めるため、彼女は人を狂わせ続けたのかもしれません。